資金調達Q&A上級編

Q 「決算書を金融機関に提出する際に留意することはどのようなことでしょうか。」

A 金融機関からの提出依頼をまたずにこちらから連絡することです。

【解説】
決算が無事終了し、納税も完了して初めて金融機関への決算書一式提出準備が整ったことになります。
金融機関の貸出意欲が強い場合には、先方からの連絡があります。また、元本回収に不安を抱いている場合にも連絡が来ます。
そうでない場合は、先方からの連絡がなくともこちらから連絡して決算書の提出を自主的に行ったほうがよいでしょう。
決算書(一式)といった場合は、貸借対照表や損益計算書のみならず、株主資本等変動計算書や勘定科目内訳明細書、税務申告書、これらをあわせて決算書一式と呼ぶのが普通です。
決算書をご持参ください、と言われて貸借対照表と損益計算書だけを持参して、融資を断られてしまったケースもあります。
金融機関が決算内容にあまり興味をしめさない場合は、追加融資意欲がないと判断されますが、そういった場合でも簡単な決算の説明は行ったほうがよいでしょう。ただし、長居は禁物です。
逆に、貸出意欲を感じられる場合には、今後の計画にも積極的に耳を傾けますので、具体的な数字とともに今後の計画をお話しするのがよいでしょう。


Q 「決算書の内容で、金融機関が気にしているところはどこですか。」

A 損益の収益性と財務の安定性です。

【解説】
金融機関は元本の回収が必須のテーマです。担当者としても貸出先が倒産してしまうと、自身の社内評価に響きますので、どうしても保守的な見方になってしまうわけです。
損益計算書の評価ポイントとしては、売上高推移と税引後利益の推移が大切です。貸借対照表では、「純資産の部」の比率が総資産に比較して高ければ高いほどいいことになります。
まずは、純資産比率で25%になるのがひとつの目安です。純資産比率が高ければ高いほど借入比率が少ないということになりますので、財務的には安心感が生まれます。
 
Q 「借入金があると純資産比率は減少しますが、そもそも借入金がないほうが比率がよくなりませんか。」

A 借入金がある企業は資金調達力があるというプラスポイントが出ます。

【解説】
預金3千万円、借入金2千万円のA社と、預金1千万円、借入金なしのB社では、金融機関評価としては、A社が上位となります。
借入金を差し引いた純粋な預金残高は双方とも同じですが、少なくともA社は2千万円の借入金を調達したという実績があります。
返済後に2千万円であれば、かつてそれ以上の融資が実行されたことになります。
たしかに、借入金の存在は純資産比率を下げる方向に作用しますが、資金調達力も加味されますので、純資産比率のみで評価されるわけでもありません。
欲を言えば、借入を実行して、かつ、純資産比率が25%以上であるのが望ましいことになります。


Q 「金融機関が気にする勘定科目は何ですか。」

A いくつかありますが、そのうちの代表的なものが役員貸付金です。

【解説】
役員借入金とは逆のパターンで、会社から代表者や役員への貸付が発生するケースがあります。
本人は、一時的な貸付の認識しかなく、貸付にかかる契約書もない場合もあります。
金融機関の評価としては、資産性がない、として純資産からそのまま差し引かれてしまうケースが往々にしてあります。
そのマイナス評価を和らげるためには、返済計画に基づく返済実績を示すのが一番確実です。
なお、貸付金勘定ではなく、仮払金勘定として表示しても評価は変わりません。
まったく返済実績がない場合には、税務上の指摘として役員賞与とされてしまう場合があります。
これは、当初より返済の意図がなく、単に勘定科目上で貸付金にしているだけの場合です。役員賞与と認定されてしまった場合には、源泉税として個人所得税を支払う必要があります。
そのような指摘を受けないように適切な返済計画と返済実績を残しておく必要があります。

Q 「説明ができない勘定科目があります。どうすればよいでしょうか。

A 内容を把握していないだけか、それとも専門的な場合なのかを整理する必要があります。

【解説】
内容把握の例ですが、業種業態によってはほとんど小口現金を使用せず、ほぼ預金勘定だけで取引が完結する企業があります。
そのような場合に、現金勘定が多額に残っている場合などは通常とは異なるケースのため、何らかの説明を用意しておく必要があります。
預金から一時的に出金した、などの明確な理由が必要ですが、返答に困る場合はそもそもそのような行為は実施しないことがよいでしょう。
「現金の内容がわからないので、会計事務所に確認する」という回答はもっとも好ましくない回答のひとつです。
現金勘定そのものを常に把握していない経営者、という評価になります。
一方、専門的な勘定科目も時にはあります。繰延税金資産などは専門的な勘定科目のの最たる例でしょう。
これは、税務上のマイナスである繰越欠損金の存在が将来的な税額の減少効果をもたらすものとして、資産性ありとする会計技術的な勘定科目です。
税効果会計という考え方に基づくものです。
中小企業だから税効果会計は適用しないという誤った考え方があるようですが、資産性がある=将来的に利益が出る、ということを証明する勘定科目ですので会社の規模にかかわらず計上できるかいなかの吟味が必要な勘定科目です。
いわゆる金融機関からの格付け評価ではプラス方向に働くものです。


Q 「信用保証協会の保証料が減免になる場合があると聞いたのですが。」

A 「中小企業会計基準チェックリスト」を提出すると、減免の適用になります。

【解説】
「中小企業会計基準チェックリスト」は所定の規則にしたがって、決算書が適正に作成されていることを会計事務所に保証してもらうものです。
この書類の提出により、保証料が減免になります。
金融機関との取引がある企業の場合、決算処理以前からこの中小企業会計基準を意識した決算処理を月次段階より進めています。
適正な決算であることの証明ですので、弊社でも有料にて扱っております(31,500円)。なお、既述の繰延税金資産や税効果会計に関する記述もこのチェック項目に入っているため、税効果会計処理を行っていない場合には、チェックリスト上で「適正意見」を表明できないことになります。


Q 「税務内容が健全なのに、信用保証協会の保証を断られてしまいました。なぜでしょうか。」

A 極めてまれなケースですが、お断りの理由は教えてもらえません。

【解説】
極めてまれなケースですが、どの企業にも可能性がまったくないとはいえない、という認識が必要です。
過去において、何らかの問題があったケースかもしれません。それは、代表者ご自身のみならず取引先の影響を受けているかもしれません。
あるいは、代表者や役員の人的構成にも何らかの問題があったケースかもしれません。
こういった事象は「定性的情報」としてくくられてしまい、明確な回答をいただくことはできません。
これと関連して、保証付融資はいいが、プロパー融資は財務内容がいくらよくても断られるケースがあります。
これも何らかの定性的情報に問題がある可能性があります。
自己資金での事業展開、もしくはノンバンクからの借入を検討せざるを得ないでしょう。


Q 「自己資金が潤沢になってきました。返済予定期間よりも早期に繰り上げ返済したほうがよいでしょうか。」

A 繰り上げ返済すべきではありません。

【解説】
利息負担を考慮すると、返済してしまったほうが損益的には好転します。
しかしながら、長きに渡り経営を継続していくと、不測の事態というものがまれですが、ほぼ確実に発生します。
想定の範囲内か外かは別として、一時的に多額の資金が必要になるケースがありうるということを準備する必要があります。
そういった不測の事態が起きたときには、金融機関はおいそれと貸付を行ってはくれません。
むしろ、余裕資金として準備しておくほうが安全です。
金融機関としても長期の付き合いを望む傾向があるため、金利の多寡のみで金融機関を頻繁に変える経営者は敬遠されてしまいます。
なお、住宅ローンの繰り上げ返済が普通にあるのは、住宅ローンについては、余裕資金を見越して借りているケースが少ないからです。
もちろん、自己資金を極力使わずに、住宅ローンを用いて個人預金に余裕をもたせておくという選択は可能です。
いざというときに、個人から法人への貸付が可能なので、その方法はむしろお勧めではあります。


Q 「返済が滞り、このままでは全額弁済は困難です。個人資産はどうなりますか。」

A 生活に最低限度必要な資産まで差し押さえられることはありません。

【解説】
資金調達まで行っていても、残念ながら事業がうまく立ち行かないケースがあります。
借入資金を過剰に当てにしてしまい、返済ができなくなっているケースです。
その場合は、個人は自己破産の手続きを経て、法人は清算手続きに入ります。その際の代表者責任ですが、自己資金での弁済は要求されますので、それ相応の準備は常に念頭に置く必要があります。
ただし、生活に必要な最低限度の資産まで売却を要請されることはありません。車両なども生活必需品であると認定されれば、売却する必要はありません。
また、自己破産後は法人代表者になれないというお話がありますが、これは事実です。
一方、その後のしばらくの冷却期間をおけば復活は可能です。
ただし、その冷却期間が5年なのか10年なのかははっきりとした基準規則があるわけではありません。


Q 「金融機関は複数と付き合ったほうがよいのでしょうか。」

A 複数がお勧めです。

【解説】
信金を通じた借入を取り掛かりとして、その後の地銀との取引、都銀との取引というように、会社の成長に合わせて金融機関も相手先が増加していきます。
その際、既存の金融機関からより大手の金融機関へと乗り換えていくのがいいのか、それとも複数の金融機関との付き合いを増やせばいいのかという選択になります。
結論としては後者となります。
これは、複数の金融機関に資金調達先を分散させていたほうが、資金調達リスクの分散につながるからです。
かつて、貸しはがしという言葉があったように、回収の際は金融機関の動きも早いです。従業員の給与を減らしてでも返済を要求する金融機関もいまだに存在します。
一方、返済計画の繰り延べなど、金融機関も人の子なので、ある程度はこちらの希望を聞いてくれます。
複数の金融機関にリスクヘッジをしながら、上手にお付き合いを進めていくのがいいでしょう。

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